Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

現代のゴルフを描いた100年前の小説「21世紀のゴルフ」が面白い!!

Bookreview

 

   J.マックロウ著 復刻版「21世紀のゴルフ」(1892年出版)

       ~ 1892年に現代の社会が予言されていた ~

            翻訳者:福島敏太郎 発行所:旺文社(初版2000年)

                

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❖ われわれは100年前のゴルフ、あるいは150年前のゴルフがどのようなものであったを、さまざま資料から知ることができる。しかしこれから100年先のゴルフがどのような姿になっているかとなると、なかなか想像するのに困難がたちはだかる。

 

❖ J.マックロウ著「21世紀のゴルフ」は19世紀の終わりごろ、100年後の現代を予想して書かれた本というから、驚きとともに興味津々になる。当時としてはゴルフ未来小説であったろう。21世紀に住むわれわれの時代を描いているのだから・・・。

 

❖ 1890年前後のゴルフ世界はどんな様子だったかというと、イギリスにゴルフが普及しはじめ、ゴルフ場が1200ほど(1850年頃は24カ所だったというから50年で50倍になっている)、道具も大量生産の段階に入り、フェザーボールが全盛で、ゴルフ業界は技術革新の波が訪れていた。鉄道網の発達でゴルファーのゴルフ環境が激変した時代でもある。

 

❖ 全英オープン開催が1860年、アメリカでゴルフクラブが生れたのは1888年ニューヨーク郊外でのことという。近代ゴルフといわれる現在の基礎が作られた時代である。このことを分かって当著を読むと作家J.マックロウという人がゴルフのすべてに深い知識と先見の明を持っていたかが分かろうというものだ。

 

❖ 小説のスチュエ―ションは、1892年3月のある夜、根っからゴルフ好きを自認する主人公ジョン・ギブソンがひょんなことから人事不省に陥り眠りにつく。そして108年後の2000年3月の某日に蘇生する。108年の間、ゴルフの世界が激変を遂げているが、19世紀の人間が21世紀のゴルフをプレーするという設定だ。さて、主人公は現代ゴルフをどう受け止めるか・・・言い換えると、作者が100年後ゴルフをどのように想像していたか、ということになる。その想像力がとてつもなく面白い。

 

❖ 100年経ってしまった現在、作者が描いてみた100年後のゴルフの虚実を比較すると次のようになる。たとえば、キャディーは無人のゴルフカートがキャディーの役割を務めるという~これはすでに電動カートで実現している。画像収録ミラーを入れるによって中継が映し出されるという~これは1938年にBBCによってマッチプレーがテレビ中継されている。20人による南アフリカチームとスコットランドチームの対戦が話題となる。~これも実際にライダーカップダウンヒルカップなど国際試合で実現している。ここには触れるスペースがないが、まだまだいろいろの分野が描かれている。

 

❖ 21世紀を予想した様々なゴルフ事情は、今日考えるとかなりの部分が実現を見ているものも多い。作者J.マックロウの未来予測がいかに正確で創造力に長けていたか、驚かされる。巻末に「予言ハイライト」として小説に登場する予言(予測)一覧がまとめられていて、一つひとつ比較できるようになっている。訳者の配慮がうれしい。

 

❖ 本書のあとがき~訳し終えて~のところで、翻訳を担当した福島敏太郎はこう記している。「J.マックロウは彼の広い科学的知識には脱帽だが、翻訳している間、本当に108年も前にこれが書かれたのだろうかと、しばしば疑問を持った。それに加えて彼の優れた文章力だ・・・」といって巧みな表現を訳せなかったことをわびている。英語が達者な方は原文をお読みになるとさらに面白いに違いない。

 

❖ ゴルフの本をいろいろ漁って読んでいるなかで、時としてこうした愉快なゴルフ本に出会うことほどうれしいことはない。ついついブログで書きたくなってしまった。