Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

*松山英樹&O・サタヤにみるフローゴルフの世界

松山英樹&O・サタヤにみるフローゴルフの世界

❖ 松山英樹の「WGCブリジストン招待」優勝(8月4日)の最終日のプレー、O・サタヤの「ゴルフ5レディス」(9月4日)最終日のプレーは、どうみてもフロー(ゾーン)状態の中でプレーしている素晴らしい内容だったと思う。二人ともメンタル面とテクニカルが調和して見事なゴルフ展開だった。1ラウンドを松山英樹は 〈−9〉の61、O・サタヤは〈−8〉の64で廻るという好成績を出した。

❖ どちらも淡々として自分の世界でプレーしている感じで、顔の表情も落ち着いて周囲に影響されるような素振りは1つもない。自分のスコア自体も眼中にはない様子にみえる。松山のプレーについて、NHKTV中継解説を担当していた田中秀道プロは「もう神の領域ですね。何も申し上げることはありません」と松山のプレーを称賛していたのが印象的だった。O・サタヤのプレーも同様で、優勝がかかる上り3ホールなど、スコアを気にする素振りなど全くなく、淡々と自分のプレーを続ける姿勢が非常に印象的だった。

❖ フローゴルフはゾーンに入ったゴルフと同義語でアメリカではよく使われる。フローは“流れ”という意味だが、仕事も遊びもスポーツも、喜び、楽しみながら没頭している状態をフローと名付けた。1960年代、シカゴ大学心理学科の教授、チクセントミハイがその心理的動態を「フロー理論」として提唱してから注目されるようになった。

❖ フローゴルフの研究家、心理学者で、ゴルフ・インストラクターのジオ・ヴァリアンテは、フローのことを「人間の全存在(心・技・体)がすべて完璧に調和し、シナジー効果のように、それぞれが相乗的にプラス作用をもたらす最高の状態を表す言葉である」と言っている。この状態はゴルフにかぎらない。ソニーのエンターテイメント・ロボット「アイボ」をプロジェクトで創り出した天外伺朗は、集団で生み出すフローの存在を指摘している。

❖ アベレージ・ゴルファーの中には、ゾーンに入ったゴルフを経験された方もおられるだろう。ブログ氏にも体験がある。打てば真っ直ぐ行く、2打はグリーンに乗る、パットは1ないし2、何も考えず、成すがままにプレーして外れることはなく、上がってみると驚くばかりのスコアだ。同伴者のプレーに気を取られるなど全くない。


❖ フローを体験したプロ選手の感想は「マスターズの最終日残り7ホールで5バーディを奪った時が、何もかもがゆっくりしたペースで進み、自分の打ちたいショットの軌跡がはっきりと見え、グリーンにボールがどのように転がって行ってほしいかも完璧にイメージできた」という、この時優勝したフィル・ミケルソンの言葉。

❖ 全英オープンに優勝経験のあるジャスティン・レナードは「フローに入った時、プレーのプロセスがいつもより少しゆっくり進んでいるように感じた。呼吸はとても穏やかで、心を過ぎるものはない。それでいて、打ちたいショットのイメージを瞬時に思い描く事ができるので、プレーそのものはとてもスピーディでテンポがよい。まさにゴルフを楽しんでいるようだ」といっている。


❖ フローゴルフは、アベレージ・ゴルファーにとって経験できることは非常に少ない。ホールインワンに近い存在だろうか。それに比べて、プロ選手は機会が多い。それは、心=メンタル面、技=テクニック面、体=フジカル面のいずれも鍛え抜いた実力を持っており、
何かのきっかけでフローに入る。

❖ その研究はアメリカで盛んに行なわれているが、それは“強い自信”=セルフ・エフィカシー(自己効力感)だとヴァリアンテはいう。優勝回数の多い選手、トッププロにはこうした要素が強いに違いない。スペースがないのでセルフ・エフィカシーについてはまたの機会に触れたい。

❖ 松山英樹には、このフローと一番近い関係にあるセルフ・エフィカシーの持ち主であると信ずるが、それを頻繁に出し、フロー状態を創出させれば、メジャー制覇も、PGA年間ベスト1位になることもそう遠くない。これから大いに期待したい。

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 参考資料:フローゴルフへの道/ジオ・ヴァリアンテ著:白石豊訳(水王舎刊)
 参考資料:運命の法則/天外伺朗著(飛鳥新社刊)