Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

NHK特番「松山英樹メジャー制覇への道・・・」をみて!

松山英樹メジャー制覇への道・・・」
       NHK年末特番を見て感じたこと!

❖ 番組「松山英樹メジャー制覇への道 年間王者への道」は、日本のプロゴルファーとしてメジャー大会制覇を狙いに行った松山英樹のチャレンジと苦悩を描いた印象深いルポルタージュだった。メジャー大会とは、レギュラーツアーとは異なる心理的重圧がある。彼はその苦悩とどう戦ったか、チャレンジする松山の1年間を追い、全米プロでの苦悩を描く特番だった。

❖ 松山のPGA先輩である丸山茂樹が密着取材とインタビュー役に徹し、松山の心の底を引き出していて興味深かった。番組は初戦からとりあげてゆくが、PGAにおける松山の実力を100m競走に例えて話したセリフが面白かった。「桐生祥秀選手が9秒98を出し世界に認められるトップ・アスリートとなったが、ゴルフでいえば松山は9秒台、私は10秒台」と。非常に分かりやすく、彼の表現力に感心した。

❖ 松山の昨年は8月までに2勝を上げ、ポイントランキングのトップを走っていた。3つのメジャー大会では全米オープン2位T、マスターズ11位T、全英オープン14位と好成績を残しており、アメリカのゴルフ界は全米プロの優勝者候補のトップに松山を上げたほどだ。2017年の松山の好調ぶりは誰もが認める存在であった。

❖ ところが、全米プロでは最終日トップを走っていたにも関わらず、後半に入り3ホール連続ボギーを叩き、その後も振るわず、ジャスティン・トーマスに優勝をプレゼントしてしまった。終了後のインタビューで、人目を憚らず涙を流す松山英樹がいた。それほど悔しかったのだ。なぜ崩れてしまったのか?番組で丸山茂樹の鋭い問いに対して松山はこういっている。

❖ 「自分がなぜ崩れたか、その原因を掴めず、最後まで自分をコントロールできなかった」と。ゴルフは競技の大方をメンタル面が占めるという。心技体の心の部分が非常に大きいスポーツだ。松山はそのメンタルの部分をコントロールできずに最後を迎えたのだった。その後遺症がプレーオッフシリーズに影響し、成績を残すことは出来なかった。

❖ 松山と同じように海外ツア転戦10年を経験し、トッププロとして活躍した樋口久子は、海外3勝を挙げ、なかでも「全米女子プロ選手権」の優勝は、日本人として金字塔を打ち立てたが、その戦いはメンタルとの闘いそのものだったと、日経新聞私の履歴書」(2017年単行本として発売)に綴っている。

❖ 「私は全米女子プロ、全米女子オープンで何度も上位に顔をだした。全米女子オープンでリーダーボードの一番上に名前が載ったこともあるが、そのたびに相手にのまれ、プレッシャーに押しつぶされていた。ショットが良くてもパットが駄目になったり、何をやっているのか訳のわからなくなったりする。1973年の全米女子プロでは、3日間首位に立ちながら6位に後退して敗れた」という。その彼女が1977年の全米女子プロに優勝した。

 ❖ スポーツ心理学者のジオ・ヴァリアンテはいう。「人は成功によって得られる自信より、失敗に伴う自信喪失によるダメージがあとに尾を引く。それも沢山の人の前での失敗は、かなり長期にわたって付きまとうことになる。」それは脳の中の扁桃体という神経回路が関係しているという。いわゆるトラウマの原因ともなるものだ。

❖ アーノルドパーマー全米オープンの最終日のバックナインで、ビリー・キャスパーに7打差という圧倒的なリードを付けていたにもかかわらず、大逆転して負けている。パーマーでさえも長く彼を苦しめたという。ゴレッグ・ノーマンがマスターズ最終日に6打差を引っ繰り返されて負け、その後優勝争いに加われなくなった。ジオ・ヴァリアンテの言葉そのものである。

❖ イ・ボミを2年連続賞金女王に導いたキャディの清水重憲は、「強い選手は1にメンタル、2にショット力、3にパット、4がアプローチ、5に飛距離という順番」といっている。松山は昨年の「全米プロ」「プレーオッフシリーズ」の苦い経験を生かして、今年は前進してもらいたいものである。今週ハワイで開かれた「トーナメント オブ チャンピオンズ」(昨年度優勝者のみ出場できる大会)で4位に入る好成績を残した。心配はなさそうである。



 注:NHK年末特番「松山英樹メジャー制覇への道 年間王者への道」
   放送:2017年12月27日(午後10時00分〜11時50分)
   縮小版 NHKスペシャル「妥協を知らない男〜プロゴルファー松山英樹
   2017年12月24日午後9時00分〜9時50分放送を参照。