Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

プロの“一打の重みと心理“を想像してみると・・・〔Part 2〕 〜松

プロの“一打の重みと心理“を想像してみると・・・〔Part 2〕
 〜全英オープン松山英樹プロの場合〜
 


❖ “一打の重み”は、プロに限らず我々のプレーにもよく経験する。前回は今年の「全米女子オープン」の韓国の若手ルーキー選手、チェ・ヘジンの1打を取り上げたが、今回は
今年の「全英オープン」最終日、スタートホールでOBを出した松山英樹のティショットについて、振り返ってみよう。

❖ 3ヵ日目までの成績は〈−4〉で5位に付けていた松山英樹は、優勝を充分狙える位置で、トップ〈−11〉のジョーダン・スピーズと7打差であった。松山は観客席からの大きな拍手に応えて、軽く帽子のツバに手を当ててショットのルーティーンに入る。1番ホール448yのパー4だ。風は左から吹くアゲンスト。手にしたクラブはスプーンだった。

❖ いつもの通りゆっくりルーティーンに入り、力強く打った。風を意識してフェアウェイのやや左側への狙い、しかしボールはセンターから風に煽られてドンドン右へ運ばれた・・・。背の低い樹林の中に飛び込みOBラインを越えてしまった。彼はフィニッシュをしっかりと取ってから、右手を離した。今年の「全英オープン」はこの1打で終わってしまった。

❖ 彼の心理にはさまざまな要素があったと思う。〈1〉優勝への意気込み、〈2〉メジャーの優勝争いを経験している度胸、〈3〉安定したこの3日間のショット、〈4〉世界の注目、日本人の大きな期待などなど、彼の心の中にはこうしたテンションを上げる要素が渦巻いていたことだろう。しかし、ミスする大きな要素は見当たらない。素人には分からない心理的重圧があったのか。それとも吹き上げの強いアゲンストの風だけであったのか。

❖ 世界第2位(現在3位)の松山のことだから、後者のような要因は考えられない。すると前者ということになる。素人には分からない無意識の中の意識があったとしたら、どんなものだったのだろうか。松山の1打を類推する言葉があったなら・・・。

❖ プロゴルファー:スコット・キャメロン(PGAツアー3勝)は「いいゴルフをするコツは、コントロールしようとする心を手放すことで、コントロールを得るということにある。ショットをコントロールしようとし過ぎたり、どんなことをしてもフェアウェイをキープしようとすると、体が硬くなりスムーズにスイングすることはできなくなってしまう。」と。

❖ これは世界で有名なメンタルコーチ、ジオ・ヴァリアンテ著「フローゴルフへの道」の中に出てくる言葉だが、彼自身もこう言っている。「コントロールしようとすればするほど、コントロールできる状態からどんどん遠ざかってしまうものだ。何かをコントロールしたい場合は結果や細かい技術のコントロールをやめることである。この矛盾した言い回しこそが、実は真理なのだ」と。素人には松山の心の中を知る由もないが、我々アベレージゴルファーにはメンタル・トレーニングとしてこの言葉は役立つかも知れない。(了)

《参考資料》「フローゴルフへの道」ジオ・ヴァレアンテ 著 白石 豊 訳 (水王舎 刊)