Golf My Wonderland

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「樋口久子〜ゴルフという天職」を読む!

ブックレビュー樋口久子〜ゴルフという天職」を読む!

❖ 樋口久子といえば、若い人にはTVゴルフ番組解説者として馴染み深いが、これまで日本女子プロゴルフ界を牽引してきた大御所中の大御所であることは知られていても、その大御所たる所以については案外知られていないように思う。恐らく前日本女子プロゴルフ協会会長(現相談役)ぐらいではなかろうか。

❖ 彼女の生い立ちと業績を日経新聞の連載記事「私の履歴書」(2016年10月)に取り上げられ、それを大幅加筆して、昨年秋「樋口久子〜ゴルフという天職」(避妊経済新聞出版社刊:2017.10)というタイトルで単行本化された。一読して、改めて彼女のゴルフの実績と日本ゴルフ界への貢献度の高さを改めて認識した。現在日本の女子ゴルフの活況は彼女の活躍に支えられていたことを、ゴルフファンはよく知る必要があると思った。

 本の内容は、第1部が「私の履歴書」として掲載された、生い立ちから全米プロゴルフ選手権というメジャー制覇した唯一の日本人プロゴルファーであり、その後、日本女子プロゴルフ協会を設立し、日本の女子プロゴルフ界を牽引した、その軌跡を詳しく記述されている。第2部は彼女の「ゴルフに邁進する心」を、青木功戸張捷とのとの対談や現日本女子プロゴルフ協会会長小林浩美の樋口久子像を語っている。

❖ 国内69勝、賞金女王11回、海外3勝、内1勝は全米プロゴルフ選手権を制覇という実績、なかでもメジャー制覇は偶然の賜ではなく、10年もの間海外ツアーに挑み、メジャー大会に何度もトップテン入りし獲得した、実力でもぎ取ったものであった。

❖ この本には触れていないが、一昨年の暮に発売された本「イ・ボミはなぜ強い」(愼武宏著)によると、韓国のプロゴルファー第1号で、韓国女子プロ協会副会長のカン・チュンジャは、樋口久子に随分お世話になり、助けられたといっている。

❖ カン・チュンジャによると、韓国LPGAが創成期に樋口久子から「韓国選手も日本でプレーしてみてはどうか」と声をかけてもらい、プロ野球金田正一の仲介で1981年に実現したという。韓国も日本も共に国民感情が良くない時代のなかで、韓国選手が日本のトーナメントに出られるよう努力し、ゴルフにおける日韓交流の礎を築いた人でもある。

❖ ともかく、樋口久子という偉大なプロゴルファーの努力により、今日の日本女子プロの隆盛があるといっても過言ではない。世界ゴルフ殿堂入り、紫綬褒章、そしてゴルフ界で唯一の文化功労章に輝いてもいる。ゴルフファンは彼女の実績や功績をしっかり心に留めておく必要があると思う。

❖ なお、この本に先駆けて2015年3月に「チャコのゴルフ人生〜その軌跡」という本が東京新聞出版局から発売されている。内容がかなりダブるところが多いが、あえて出版したのは、日経新聞の「私の履歴書」で取り上げられた価値の重さによるものであろう。「私の履歴書」で取り上げられたゴルフ界の人は、宮本留吉、ジャック・ニクラウス、トム・ワトソン、青木功岡本綾子らがいるが、宮本留吉とトム・ワトソンは出版化されていない。