Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

ブックレビュー「ゴルフが消える日」

❖ PGA(日本プロゴルフ協会)は、倉本昌弘会長の提案に基づき、2年前から「ゴルフ市場活性化」に取り組んでいる。具体策として人材育成とゴルフ人口創出ための「PGAゴルフアカデミー」の開校や「PGAジュニアゴルファー育成プロジェクトの展開」、「ゴルファーライフスタイル調査の実施」など積極的に活動している。

❖ 倉本会長の提案の元となっているのは、15年前に比べてゴルファー数が半減しており、ゴルフ用品市場でも60%まで落ち込んでいる。ゴルフ市場全体を底上げしないと、影の薄いスポーツとなってしまう。もう一度ゴルフの持つ優れた文化性や人間教育機能、そして自己責任と自らの尊厳を重視する類稀なスポーツを改めて社会に認識してもらい、再活性化を推進していこうという狙いである。

 
❖ 本書は現在迎えているゴルフ業界の危機を、多角的にスポットを当て、落日のゴルフ界の現状をレポートし、ゴルフに携わる各分野の人々に奮起を促す内容になっている。全体は6章からなり、1章から4章までは一般ゴルフファンを含めゴルフ界の実態やゴルフ場、ゴルフ練習場の経営危機など様々な角度から取材と資料により現状を浮彫りにする。第5章と最終章は「復権のカギは“若い世代”にあり」と若者層にスポットを当て、現状と課題解決を提案する。

❖ 特に最終章では、一般の人々が気軽にゴルフと接触できる環境づくりの必要性を訴え、そのためには小難しい「ルール」の変更や18ホールではなく9ホールのプレイの採用など、身近なプレイスタイルの創出を提案している。なかでも現在のゴルファーが、友人知人を1人ゴルフに誘うだけで多くの新規ゴルファーを獲得できるという提案は一考に値する。課題はその具体化をそのような方法でするかだ。

❖ 一般ゴルファーはプレイに関わる分野しか興味を持たないが、ゴルフ業界には、さまざまな分野があり、個々に大きな課題を抱えている。本書はそうした課題を取材をもとに現状の課題を浮き彫りにしている。ゴルファーにとって、ゴルフ業界全般を把握できる点もありがたい。

❖ 2020年の東京オリンピックにはゴルフ競技が採用される。それだけに、ゴルフ市場再生活性化の好機であり、どの分野も積極的に取り組まないと、本書のタイトルのように消え行く危険性がある。本書はジャーナリストとしての著者の警告でもある。(了)