Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

ブックレビュー「マリガンという名の贈り物」

ブックレビュー「マリガンという名の贈り物」

❖ ゴルフの本をネットで探していたら、この本が目に留まった。「マリガン」という言葉を知っていたからだ。早速取り寄せて読んでみた。いま仕事に多忙な世代に、ゴルフが仕事や人生に役立つ事例として、推薦してもいい本かなと思い取上げてみた。

❖ 著者はケン・ブランチャードとウォリー・アームストロング。ケンはベストセラー「1分間マネージャー」の作者でマネジメント・コンサルタント。ウォーリーはプロゴルファー。翻訳は秋山隆英。カルフォールニア在住のマネジメント・コンサルタント。本の帯にはジャック・ニクラウスとリーダーシップ論の権威ジョン・C・マクスウェルの推薦文がある。出版元は創元社、2013年刊。

❖ まず「マリガン」という言葉について最初に触れておきたい。もちろん知っている方も多いに違いないが、マリガン=mulliganとは、ゴルフのプライベート・ルールで、「打ち直し」のこと。主にティ・ショットで使われる。“もう一度打たせて!”とパートナーから言われた経験のある人も結構いるのではないか。もちろんパートナー全員の了解が必要だが。

❖ さて、小説の方だが、モーレツサラリーマンがゴルフという奥深いスポーツを通して、人生を再発見して行く物語である。主人公ポールは一流大学、大学院を出て優秀なビジネスマンとなり、起業する。いまや年商数百億を上げる事業家だ。彼はすべてにトップとなることを信条としている。事業も結婚パートナーもトップを勝ち取る。事業のほかに趣味のゴルフにもその姿勢は変わらない。

❖ あるプロアマ大会でデイビィス・ラヴ三世と一緒の組でプレーする。彼はHC12.いいプレーをみせようと意識し過ぎて、散々な結果をみる。プレーをみたデイビィスは、ポールのこれまでの生き方をそれとなく当ててしまう。そして、デイビィスから師匠のオ−ルド・プロことウィリー・ダンを紹介される。

❖ ポールとオールド・プロの付き合いはしばらく続き、ポールはゴルフと人生の共通点を多く知る。そして、「Game of Life First〜人生がまず第一」という言葉を教わり、その意味の深さに触れる。オールド・プロから、いつでも「マリガン」を使っていいというプレーをする。すると、スコアのみを求めるゴルフから楽しいゴルフを味わう。

❖ そしてオールド・プロから「マリガン」はゴルフだけでなく、日常生活にも大きな力を発揮することを教えられる。それは神が我々に「マリガン」を与えてくれているもので、人生はゴルフと似ていて、人生にも「マリガン」がある。神がイエスを通して「マリガン」の役割を果たしてくれるという。ポールは新たな人生の道を発見し歩み始める。

❖ 物語は、二人会話で成り立っているが、テーマの「マリガン」は神からの贈り物で、イエスを通して日常生活と共にあると説くオールド・プロのスピリチャルな口調は、我々日本人には少々馴染み難いところがある。ともかく、ポイントは自己中心のモーレツ・ビジネスマンがゴルフを通して人生の生き方、疎遠だった家族愛に目覚めていく物語だが、読んでいて、オールド・プロがあの「リトル・レッドブック」の作者、ハービー・ペニックを連想させる。

❖ それもそのはず、ハービー・ペニックはデイヴィス・ラブ三世のあの師匠であった。そういえば、この小説とは関係ないが、スピリチャルな場面では映画「バガー・ヴァンスの伝説」にも少し通ずるところを感じる。この映画に登場する宗教的、哲学的なところは、かの伝説的な小説「王国のゴルフ」の蔭が少し見えたりする。ゴルフ本を多く読んでいると、意外に影響し合うところがあるものだなぁと思って読んだ。