Golf My Wonderland

ゴルフエッセイ~見たこと読んだこと気づいたこと~気ままに書いています。

本「ゴルフの森」PGAツアーの人と生活を描いたユニークなレポート

ブックレビュー「ゴルフの森」舩越園子著
PGAツアーの人と生活を描いたユニークなレポート

❖ ゴルフジャーナリスト舩越園子が書いたちょっとユニークな本である。長年アメリカのPGAツアを取材している人。その都度出会った人々やトーナメントの舞台裏など、彼女の好奇心が様々な出来事、目に留まったちょっとした物事から発展し、ジャーナリストとして、時には私情を挟んで綴られる。我々ゴルフファンにとって興味深いレポートになっている。

❖ 「米ツアは巨大な森だ。世界中から集まったたくさんの木々が鬱蒼と茂っている。森そのものが1つの物体であるはずはなく、1本1本の木によって構成されている。すぐさま目に入るのは、天まで届きそうな木。なるほど、これがタイガー・ウッズという名の木だなと分かる。ここ数年急激に背が高くなったこの木はロリー・マッキロイの木だ・・・。」4年前に書かれているので今より少々古い。(本書「はじめに」より)


❖ アメリカのゴルフ界を森にたとえて、大木から小さな草木まで、その成り立ちやその環境に目を配り、森を探索することで出会うゴルフの巨人や市井の人々を取材し、森となっているゴルフ界を様々な視点から捉え、実に面白いレポートなっている。4大メジャーの1つ「マスターズ」で働く人々の一面を描いた場面はこうだ。

❖ 著者が風邪を拗らせたような咳の発作に襲われる。メディアセンターで発作が起こると、周囲に迷惑をかけぬように狭い場所に逃げ込む。小空間にうずくまると、ダイニングで働いている地元の女性とおぼしきオバサンたちが寄ってきては心配してくれる。その空間をオバサンたちから「園子の場所」と呼ばれるようになり、滞在期間中面倒をみてくれる。

❖ 「またある夜、駐車場に向かうカートの中で発作が起きる。すると「カートを運転していたオジサンは『大丈夫かい?水要るか?』。ゲートに立つセキュリティのオジサンたちも集ってきて『救急車を呼ぼうかい?』。私は必死に『ノー! すぐおさまるから』と途切れ途切れ答え、オジサンたちはあたふたしながらボトル水を持ってきてくれたり、背中をさすってくれたり・・・。」

❖ 「日曜日の夜、すべてが終わって帰路につく時、ここに帰ってきたいと心底思う。私にとって10数回目の「マスターズ」で、オーガスタがやっと私の心の故郷となった。」と書いている。何ともオーガスタの人々の心優しさが伝わってくる。メジャー大会に1つも触れず、働いている人々の姿を映し出すことによって、このゴルフ場を造ったボビー・ジョーンズの、ゴルフ好きな人々へのもう一つの心遣いが息づいていることを伝えている。

❖ ゴルフを楽しむ我々にとって嬉しい29編の物語が詰まっている。読んでいて楽しい限りだ。著者はこの本以外にPGAスターの素顔を書いた「王者たちの顔」「才能は有限 努力は無限 松山英樹の朴訥力」「海外ツアー・ツアー読本」など多数書いている。